救済詩 『幻詩』 by KAINEL

幻詩

霧のたちこめる
月明かりに浮かびあがる
白い蝶の群れ
ひらひらと羽をはためかせ
魂の水面を、あてもなく飛んでいく

漆黒の空は心の影
輝く白い月は儚い人の夢
足元の水草はまとわりつく生の迷い
今私はこの時を静かに思う
水の波紋が広がり、やがて消えるまで

艶めく長い黒髪に絡む
遊女の背中に咲いた睡蓮の花
つかの間の自由に身をゆだね
孵化したばかりの蝶の羽音に耳をすます
なまめく紅の唇に小指をそえて

霧のたちこめる
月明かりに浮かびあがる
白い蝶の群れは、ひらひらと降りだした雪になって
艶めく長い黒髪に絡む
遊女の背中に咲いた睡蓮の花は水面にかえって
水の波紋が広がり、やがて消えるまで
私はこの時を静かに思う