救済詩 『銀のピストル』 by KAINEL

銀のピストル

ただ人を信じていただけなのに
ささやかな明日を信じていただけなのに

ポケットには色あせた家族の写真が
今もあのときのまま微笑んでいる
流せない涙を流したい
乾いた唇にもう一度ぬくもりを取り戻せるなら

僕は思い出す
こめかみにピストルを突きつけられた感触
轟音とともに耳鳴りが響き渡り
頭にめり込んでくる鉛の銃弾
張り裂けるような痛みのあとの静寂
暗闇に落ちてゆく感覚

悪い夢を見ているようさ
母は元気だろうか
もう会うこともできない
冷たい身体に熱い血を流してほしい
姉は無事だろうか
もう会うこともできない

でも心配しないでほしい
僕は永遠に待つことができる
無常にも僕の命を奪った奴らを
太陽も届かないこの世界で
僕は銀のピストルを授かった
だから悲しまなくていいよ