魔橋の上で
歩きだす
立ち止まる
振り返る
また歩きだす
約束は果たさなければ
そう言い聞かせて
ここまでやってきた
水面に映る
古ぼけた石造りのアーチ橋
魔物が住む城の入り口
そんなに月日が
過ぎたわけではないのに
ずいぶん前のような
気持ちがする
浅い雪の降る午後
顔を伏せて
あの日歩いたこの橋
何を約束したのか
誰にも言えない
言うこともできない
目の前に広がる暗い森
救われない運命を
暗示しているかのように
大きな口を開いて
立ち止まる
振り返る
もう渡ることもない
魔橋の上で