救済詩『魔橋の上で』by KAINEL

魔橋の上で

歩きだす
立ち止まる
振り返る
また歩きだす

約束は果たさなければ
そう言い聞かせて
ここまでやってきた

水面に映る
古ぼけた石造りのアーチ橋
魔物が住む城の入り口

そんなに月日が
過ぎたわけではないのに
ずいぶん前のような
気持ちがする

浅い雪の降る午後
顔を伏せて
あの日歩いたこの橋

何を約束したのか
誰にも言えない
言うこともできない

目の前に広がる暗い森
救われない運命を
暗示しているかのように
大きな口を開いて

立ち止まる
振り返る
もう渡ることもない
魔橋の上で