救済詩『屠殺場行きのバスの中で』by KAINEL

屠殺場行きのバスの中で

目の前に男が座っていた
うつろな目をして両手を見ていた
表情のない真っ白い顔で
まばたきもせずに
不安定な表情をして
隣に座っている女に気づきもせずに

後ろには眼鏡をかけた子供が
ぶつぶつ独り言を言いながら
放心状態で外を眺め
時々大声を上げて
太った母親を困らせていた

夜9時
いつもと同じ時間
屠殺場行きのバスは出発する
鈍いエンジン音を響かせ
真っ黒い排気ガスを
人ごみに撒き散らして

がやがやうるさい人ごみを
乱暴な運転で通り抜け
寂しい公園を横ぎり
赤く点滅する信号を右に曲がり
目的の場所を目指す

途中で降りる人は誰一人いない
みんな無気力にうつむいている
黒い空を焦がす炎が燃えあがると
屠殺場が見えてきた
バスに乗っている人々が震え
怯えたような目が血走しり
バスが止まった