救済詩 『天を指さす人』 by KAINEL

天を指さす人

月明かりに照らされて
うつむくあなた
すぐ目の前にいても
はるか遠くに感じてしまう
同じ地上にいるのに……

約束してくれるの?
謎めいた笑みで天を指さすひと
僕をつれていってくれるの?
うそじゃなくて、幻じゃなくて

まぶたに陰る背徳の匂い
三日月にけむる甘い吐息
孵化した赤子の泣き声が聞こえる
それは人である運命に翻弄されて
うろたえてばかりいる預言者の声だ
いじらしくささやかな反抗をする救世主の声だ

漆黒の背景に浮かびあがる
カンバスに描かれた栗色の髪の乙女
誰も見たことがない天国を指さして
謎めいた笑みをたやさない

きっと……
預言者がこの世界を去ったあとでも
きっと……
救世主がこの世界を去ったあとでも
きっと……
僕たちがこの世界を去ったあとでも