救済詩 『影の街』 by KAINEL

影の街

乾いたアスファルトに影が映る
ひとり、ふたり、さんにん、よにんと……
静かな街、交差点、横断歩道
僕はひとり誰もいない街を眺めている

午後の昼下がり
横断歩道の信号が青になった
晴れ渡った空は青く
心地よい風が吹いている

僕は歩き出す
誰もいない街の雑踏をかき分けて
無数の影だけがざわめく歩道をすり抜けて
そう、心の空白をかき消すように

どんと誰かが僕の肩にぶつかった
だけど目の前には誰もいない
足元の影が通り過ぎていくだけだ

姿の見えない人の波
そこにはかすかな溜息や諦めや悲鳴がこだまして
そこには夥しい嫉妬や罠や矛盾が溢れていて
そこには無慈悲や苦悩や沈黙が街を覆っていて……

午後の昼下がり
忙しそうに人影が思い々々の方向に歩いていく
僕は横断歩道の信号が青になるのを待っている
この信号が変わるのを、この現実から開放されるのを……

横断歩道の信号が青にかわった
僕は歩き出す
晴れ渡った空は青く
心地よい風が吹いている