救済詩 『瞬き』 by KAINEL

瞬き

記憶の隅にある薄暗いカフェで
気難しい小説家が
熱心に歴史書を読みふけっていた
太陽の光とは無縁な白い顔で
眉間に苦悩のしわを寄せて

裸電球の落とすわずかな光の下
街のにぎやかに行き交う人波に目もくれず
しんと静まり返った空間にぽつんと座って
過去に起きた悲劇について、これからのことについて
小説家は歴史書に思いを巡らせていた

記憶の隅にある薄暗いカフェで
僕はその小説家を見かけたことがあるかもしれない
それがずいぶん前だったか、ずっと最近だったかはよく覚えていないが……