救済詩『暗黒夜の小高い丘で』by KAINEL

暗黒夜の小高い丘で

水を垂らした水彩画みたいに
形なく滲んだ風景
重い足どりで死出の道を急ぐ
運命をもてあそぶ暗い夜に導かれて

ぼんやりと赤い月が空に浮かぶ
血を流した無念の色のよう
熱くもなく、冷たくもなく

祈りの声を口にしてみた
精霊と悩める霊魂が安らかになるようにと

それは――
物憂く寂しい暗黒夜の儀式なのか
それとも――
忘却と悔恨の狭間での悲しい出来事なのか
ひとつ、ふたつ、みっつ、と
消えそうな光が現れては消え、消えては現れ

小高い丘の暗い地面には
銀色の花が辺り一面に咲いていた
私は女みたいに涙を流した
めめしく、すすり泣いた

憂鬱な気持ちはいつも
甘い蜜の匂いをふりまいて
彼方からやって来ては
私を楽しそうに苦しめ
麻痺させ、落としいれ、突き落とす

薄霧が冷めた肌を湿らせた
戻ることのない過去の幸福のよう
悲しくもなく、嬉しくもなく

少女の右目から生まれた真紅の蝶と
老婆の左目で死んだ漆黒の蝶が
そっと吐息をもらし
ひらひらと羽をはためかせた

あなたは言うだろう
奇跡をためしたらいいと