救済詩 『ある詩人が見た夢』 by KAINEL

ある詩人が見た夢

人影は夢のように消えていった
命は砂のようで
魂は不滅かもしれない
言葉は消えた
彼女は消えた
友は消えた
母は消えた
家族は消えた
僕の影も消えた

目を開いて周りを眺めてみた
透き通るように青く澄んだ空の下に立っているけれど
背の高い壁に囲まれてここから外に出られないようだ
この中には誰もいない
時が流れているだけ
僕は年老いてゆくだろう
情熱はいつまで続くだろうか
希望は、夢は、絶望もある確かに
もう夏が過ぎようとしている背の高い白い壁に囲まれて
僕は風になびく草原の息吹に耳をすませ
青く晴れた空を見つめた

風が強くなってきた
うしろに見える山のような大きな白い塔は
僕を中に入れてくれるだろうか……