救済詩 『その永遠に!』 by KAINEL

その永遠に!

奈落の底の奥の奥
もがき苦しむ魂の群れすれすれに
光の翼で舞い踊る

俺は羽ばたく
火炎が噴き出る奈落の底を
メシアが見捨てたこの俺が
ここではみんなの人気者

天を覆うグロテスクな暗黒の空
凄まじい雷鳴が辺りかまわず鳴り響く
悲劇の残骸が大きな目であたりを見回し
理性の破片が大地に棘を突き立てる

するとさっきまで悲しい顔をしていた亡者どもが
声を張りあげて歌いだしたのさ!
泣きそうな笑顔を歪ませて
大声をだして歌いだしたのさ!

その歌声は薄気味悪いほどしわがれていたけれど
天使の歌より情熱的できれいで美しかった

ああ、雷鳴が鳴り響く
土砂降りの雨が亡者どもの顔に降りそそぐ
凄まじい嵐が枯れた大地吹き抜ける

するとにわかに空に一点の光がこぼれだし
みるみるうちに暗黒の空が明るくなって
小鳥のさえずりさえ聞こえてきそうな
光り輝く穏やかな空にかわっていくじゃないか!

あれほど荒れ狂っていた嵐も
すっかり息をひそめ、おとなしくなったよう
まぶしい天界の光が暗く湿った大地を照らす
天上から天使の羽がひらひらと落ちてくる

それが合図だったのか
今度は空の上から、この上もない綺麗な音色
そして天使の歌声が響きだした

その歌声に聞き入っていた亡者どもは
思い出したように、またしわがれた声で歌いだす
言葉にならない言葉をはりあげて
声にならない声をはりあげて

それは純粋な天界と奈落の底の共演だ
天国と地獄が愛しあう瞬間だ
天使と悪魔が愛し合う刹那だ

こんなに素晴らしい景色はないだろう!
これは奇跡以上の奇跡で
神でさえ思い描けなったことで
神でさえ成しえなかったことがここにある

それがすぐに引き裂かれる運命だとしても
この瞬間は永遠に続くのだ!
永遠に!
その永遠に!