救済詩 『儚月の夜に』 by KAINEL

儚月の夜に

冬の夜に浮かぶ月が
ぼんやりその姿を浮かべて
山吹色に光って滲む

濃い墨を流した夜の空は
うねる暗闇が静かな声をもらし
辺り一面に満ちて広がり

炎、松明、灯、蝋燭、吐息、白い蛇
頬をなでる柔らかくなまめかしい風
見上げれば鵺が輝く翼をはためかせ

この世のもの
あの世のもの
そっとまぶたを閉じて
夜の息を吸い込んで

手のひらに死にかけた蝶
その羽は万華鏡からのぞく宝石箱の輝き
夜空に散りばめた星の瞬き

この世では美しすぎたいきもの
あの世でまた命を授かるいきもの
儚月の夜に物思いに沈む

輪廻の花、転生の蜜
手のひらの蝶は
そっと羽を閉じて
僕を残して死んでいった