救済詩 『天使と娼婦』 by KAINEL

天使と娼婦

思い出すのは
なくした心のかけらと心の痛み
忘れかけていたのは
情熱と夢と希望と……

美しい娼婦は無邪気に笑い
僕は背中の羽をまたひとつ彼女に捧げる
君の手は僕の頬をつたい
鍵を掛けていた心の扉を解き放つ

止まっている砂時計
傷ついた足
慈悲にあふれた透明な瞳
孤独なのは君も同じ
恐れることはない

光と闇の間、深淵にある世界
その天使と美しい娼婦は姿を消し
二度と戻ることはなかった

深く沈んだ青い夜が明ける
低い地響きとともに
霧に包まれた夜が明けてゆく
人々は眠りから目覚め
はじめて喜びの涙を流した