救済詩『あなたの墓標にて』by KAINEL

あなたの墓標にて

あなたを思う時
私の胸は揺らぎはじめる
実際、あなたは一体、なんであったのか?
私は一体、なんであったのかと……

今日まで、あなたに生を授かり生きてきた
それは神聖と邪悪の奴隷として生きよと、
愛と憎しみの奴隷として生きよと、
欲望と憎悪の奴隷として生きよと、
宣告された時だった

もう、すでに私は年老いて
孤独で何も持たない老人となった
死神がその糸を断ち切る用意をしているのが、
私にはよく解かる

そして今、私は回顧する……

あなたはたくさんの人に愛された
ああ、しかし私はたくさんの人に疎まれた

あなたはたくさんの人に祝福された
ああ、しかし私はたくさんの人に憎悪された

あなたはたくさんの人の胸に生きている
ああ、しかし私はその光彩に嫉妬することしかできない

私の人生は、愛と憎しみの人生だった
欲望と憎悪の人生だった
神聖と邪悪がいつも頭の中でせめぎあっていた人生だった……

いま、あなたの墓標にて
こんな解かりきった事を告白する自分を恥じています
でも告白する衝動に駆られた自分も同じくらい愛しいのです

もう、すでに私は年老いて
孤独で何も持たない老人となっています
死神がこの魂に牙を突き立てようとしているのが
はっきりと解かるのです

でもなぜ今、こんな事をあなたに言うのでしょう?
これは老人の空しい断末魔の叫びなのでしょうか
それとも、孤独な老人の独り言なのでしょうか……
もう私には明日がないのです
夕暮れに沈む太陽のように消えていくだけなのです
命の砂時計が尽きようとしているのです

ただ、私が朽ち果てていく前に、
あなたに解かって欲しい事が一つだけあります

あなたと共に歩んだ時……
あなたと共に過ごした時間の中で
ほんの一瞬でしたが……

あの時だけは、あなたよりも強く感じたのです!
神聖と邪悪の大きな渦の中で、
神が天使が悪魔が、私の内に舞い降りて来たのを
あの時だけは、あなたよりも強く感じたのです!
はっきりと!
確信を持って!

私はここで孤独に死んでいきます
人知れず孤独に死んでいく
私はあなたのようには生きられなかった
ただ、私にしか出来ないこともいくつかあった
それだけ解かってほしかったのです……