救済詩 『柔らかな夜』 by KAINEL

柔らかな夜

しめやかな夜に響く
凛々しくて、悲しくて、たどたどしくて
痛くて、気高くて、自虐的で、救いのない歌声

胸の奥から聞こえる魂の咆哮
赤い衣をまとった呪われた生きもの
鋭い爪がさっと光って、赤い線ができた

もう、あの自由には帰れない
もう、あの気高さには戻れない

溢れだす赤い雫が大地に吸い込まれていく
鋭い牙が震える肉を咬みきって
剥きだしの心臓に狙いをさだめる

高鳴る鼓動は早鐘のようだ
剥きだしの魂が叫び声をあげている
見せかけの永遠が手招きをしている

もう、あの自由には帰れない
もう、あの気高さには戻れない

柔らかな夜が降りてくる
苦悩と憂鬱の幻影が辺り一面に広がって
黒い生きものが真紅の花を咲かせた

柔らかな夜が落ちていく
予兆と予感の幻影が僕を惑わせて
黒い生きものが僕の身体と魂に……

もう、あの自由には帰れない
もう、あの気高さには戻れない

もう、あの自由には帰れない
もう、あの気高さには戻れないんだ