救済詩 『感情の天秤』 by KAINEL

感情の天秤

生まれたばかりの魔女が囁いた……

光色の病院で叫ぶ囚人達は
私達の生まれ変わりで
私達の身代わりで
私達の代弁者で
苦しんでいるからじゃない
病んでいるからじゃない
ましてや
狂っているからじゃない……

神聖と邪悪が
一緒に暴れだして
取り乱しているだけなのだから

雲行きがあやしい
嵐がやってくる前触れ
小さな世界で何かが壊れて
たくさんのものが蠢いて……

大きな木の切り株に座って
年老いた魔術師が大きなあくびをした……

血色の広場で叫ぶ指導者達は
欲望の生まれ変わりで
醜悪の権化で
無知な共犯者で
君達のためじゃない
私達のためじゃない
ましてや
この世界のためじゃない……

見渡すかぎりの大地が
朱色に燃えている
声にならない悲鳴が
何度も心に響いた……

なりたての神と悪魔が笑って話した……

死色の洞穴で叫ぶ亡者たちは
憎悪の生まれ変わりで
不気味な生き物で
恥知らずで
仲間のためじゃない
相手のためじゃない
それに
自分のためじゃない……