凍った空に、みぞれが降る夜に……
みぞれが降る夜に
僕は旅支度をはじめた
凍りついた風はひんやりと冷たくて
やわらかい僕の頬に爪をたてていた
怖いくらいに澄んだ夜空には
消えていった夢や希望や
溢れでてくる迷いや後悔の数だけ
小さく光る無数の星が舞っていた
目の前に広がる真っ白い景色と
それと同じくらい真っ白い息をはきながら
凍える両手をこすって……
小さいリュックに入れたのは、
古いコンパスとしわだらけの地図とわずかなお金と
あてにならない小さな希望みたいな感情と
みぞれが降る夜に
僕は旅支度をはじめた
凍えるほど寒い夜なのに
僕はここを離れることを決めた
雪になった真っ白いみぞれが
青黒く凍った夜の空からおちてきて
何気なくふと見上げた
僕の頬にふれて涙になった
遠くで聞こえる汽車の音が
眠りについた山々にこだまする
灯りのないプラットホームで、僕は汽車の到着を待っている
ぴんと張った夜の寝息に耳をすまして……