確かにいた場所
ぼんやりと思い出す、あの部屋の光景
誰かの部屋なのか、僕の部屋なのかわからない
そこにはベッドが、確か上下に二つ、壁から伸びていた
人のいた気配は身近に感じられた
だけど今は誰もいない無機質で殺風景な部屋だった
乾燥機の音が低く鳴っていた
部屋の奥には窓があって、明るい陽射しが差し込んでいた
頑丈そうな洗濯機とステンレス製の台所が、
ベッドの向かいに備え付けてあった
僕はしばらく誰かが来るのを待っていた
けれど誰も来る様子がなかったので、
やわらかな陽射しが満ちていた部屋を、僕は後にした
道路沿いにひっそりと建っている白いアパート
僕はその一部屋に住んでいた
アパートはガラス張りで、外からは丸見えだった
建物のまわりは笹の木がたくさん生えていて、
アパートを覆い隠すほどだった
僕はアパートの前で男達と話していた
3人くらいいたようだった
何を話していたのか思い出せないけれど、
男達の口数は少なく、その表情は硬かった
そのうち夕闇が辺りを夜のほうに引き寄せてくると、
アパートにひとつ、ふたつと灯りがつき始めた
すぐ横では、あいかわらず車が行ったり来たりしていた
オレンジ色に光る街灯の下を僕は歩いていく
その影はみんな灰色になる
目の前に古びたホテルが見えた
記憶の底で一度行ったことのあるホテルだった