救済詩『顔』by KAINEL

電車に乗ったら
顔が並んでいた
すました顔で
みんな並んで

少し戸惑った僕は
閉まるドアの横に立ち
遠くの街並みを見た

こんなこと
珍しいことでもないし
驚くことでもないのに

顔が並んでいる
ずっと向こうまで
すました顔で
みんな並んで

こんなこと
いつものことだし
当たり前なのに

戸惑いの消えない僕は
走り始めた電車に揺られながら
遠くの夏空を見つめた

救済詩『どうしちゃったんだろう?』by KAINEL

どうしちゃったんだろう?

どうしちゃったんだろう?
食べても
食べても
飲んでも
飲んでも
止まらないなんて

どうしちゃったんだろう?
見ても
見ても
聞いても
聞いても
止まらないなんて

どうしちゃったんだろう?
買っても
買っても
揃えても
揃えても
止まらないなんて

どうしちゃったんだろう?
働いても
働いても
稼いでも
稼いでも
止まらないなんて

どうしちゃったんだろう?
比べても
比べても
選んでも
選んでも
止まらないなんて

ほんと
どうしちゃったんだろう?
教えてくれない?
ねえ、教えてくれない?

救済詩『工場』by KAINEL

工場

透明で見えない煙が
ビルの屋上から
賑やかな大通りから
デパートのショーウィンドーから
交差点の広告から
空に向かって
もくもく
伸びている

ここで
生産しているのは
憧れや偶像や
欲望や快楽や
我儘や贅沢など

みんな我を忘れて
欲しがるものばかり

透明で見えない煙が
街を歩いている人から
道路を走る車から
駅に着いた電車から
バス停のバスから
空に向かって
もくもく
もくもく
たくさん伸びている

救済詩『なぜ、僕は……』by KAINEL

なぜ、僕は……

なぜ問わないのか……

きらびやかな
街の片隅で
ひとり孤独に
死んでいく
たくさんの魂を

なぜ問えないのか……

摩天楼の夜の下
餌を探し続ける
ネズミのように
走り回る
たくさんの魂を

ひと月の生活の糧と
同じ値段のシャツが
きれいに飾られている

ファストファッションを
無造作に着た僕は
何も言えないまま
その前を通り過ぎた

救済詩『夢みた世界』by KAINEL

夢みた世界

ここじゃない
とびきり豪華な
美味しい料理を
好きなだけ
楽しめても

ここじゃない
意識がとろける
娯楽や快楽を
望むだけ
楽しめても

ここじゃない
とびきり高級で
華やかな衣装を
好きなだけ
身に着けても

夢みた世界
君と僕が
望んだところ

夢になった世界
君と僕が
選んだところ