顔
電車に乗ったら
顔が並んでいた
すました顔で
みんな並んで
少し戸惑った僕は
閉まるドアの横に立ち
遠くの街並みを見た
こんなこと
珍しいことでもないし
驚くことでもないのに
顔が並んでいる
ずっと向こうまで
すました顔で
みんな並んで
こんなこと
いつものことだし
当たり前なのに
戸惑いの消えない僕は
走り始めた電車に揺られながら
遠くの夏空を見つめた
顔
電車に乗ったら
顔が並んでいた
すました顔で
みんな並んで
少し戸惑った僕は
閉まるドアの横に立ち
遠くの街並みを見た
こんなこと
珍しいことでもないし
驚くことでもないのに
顔が並んでいる
ずっと向こうまで
すました顔で
みんな並んで
こんなこと
いつものことだし
当たり前なのに
戸惑いの消えない僕は
走り始めた電車に揺られながら
遠くの夏空を見つめた
どうしちゃったんだろう?
どうしちゃったんだろう?
食べても
食べても
飲んでも
飲んでも
止まらないなんて
どうしちゃったんだろう?
見ても
見ても
聞いても
聞いても
止まらないなんて
どうしちゃったんだろう?
買っても
買っても
揃えても
揃えても
止まらないなんて
どうしちゃったんだろう?
働いても
働いても
稼いでも
稼いでも
止まらないなんて
どうしちゃったんだろう?
比べても
比べても
選んでも
選んでも
止まらないなんて
ほんと
どうしちゃったんだろう?
教えてくれない?
ねえ、教えてくれない?
工場
透明で見えない煙が
ビルの屋上から
賑やかな大通りから
デパートのショーウィンドーから
交差点の広告から
空に向かって
もくもく
伸びている
ここで
生産しているのは
憧れや偶像や
欲望や快楽や
我儘や贅沢など
みんな我を忘れて
欲しがるものばかり
透明で見えない煙が
街を歩いている人から
道路を走る車から
駅に着いた電車から
バス停のバスから
空に向かって
もくもく
もくもく
たくさん伸びている
なぜ、僕は……
なぜ問わないのか……
きらびやかな
街の片隅で
ひとり孤独に
死んでいく
たくさんの魂を
なぜ問えないのか……
摩天楼の夜の下
餌を探し続ける
ネズミのように
走り回る
たくさんの魂を
ひと月の生活の糧と
同じ値段のシャツが
きれいに飾られている
ファストファッションを
無造作に着た僕は
何も言えないまま
その前を通り過ぎた
夢みた世界
ここじゃない
とびきり豪華な
美味しい料理を
好きなだけ
楽しめても
ここじゃない
意識がとろける
娯楽や快楽を
望むだけ
楽しめても
ここじゃない
とびきり高級で
華やかな衣装を
好きなだけ
身に着けても
夢みた世界
君と僕が
望んだところ
夢になった世界
君と僕が
選んだところ