ある音楽家の死に
聞いていた
孤独な毎日に
いつも
聞いていた
憂鬱な朝に
苦悩する夜に
繰り返し
繰り返し
心が凍らないように
心が消えてしまわないように
ある音楽家の死に
聞いていた
孤独な毎日に
いつも
聞いていた
憂鬱な朝に
苦悩する夜に
繰り返し
繰り返し
心が凍らないように
心が消えてしまわないように
いつまでも
いつまでも
いてほしいと
思っていた
いつかは
離れていくと
感じながら
いつまでも
いてくれると
思っていた
いつかは
終わりがくると
気づきながら
いつまでも
続いていくと
思っていた
永遠の意味も
よくわからずに
この私にも
この宇宙に愛は必要か
そして、
この私にも
この星に神は必要か
そして、
この私にも
この世界に奇跡は必要か
そして、
この私にも
この国に希望は必要か
そして、
この私にも
この地に幸福は必要か
そして、
この私にも
この街に悲しみは必要か
そして、
この私にも
望郷
いつも思うのは
夕日に染まる
なだらかな山の姿
そこには
一日の終わりと
明日への憧れと
夕焼けの空
群れになって
森に帰る烏
広がる田畑
山の影に隠れて
静かになって
そこには
いつも手を振って
見送ってくれた
母がいて
いつも笑顔で
待っていてくれた
母がいて
東京の夜
立ち並ぶビル
灯りのついた
音のない
静かな部屋
誰もいない通路
乗る人のいない
薄汚れたエレベーター
冷たい空気
鍵のかけられた窓
曇りガラス
閉めかけの
レースカーテン
踏切の音
見下ろせば
線路を軋ませて
駅に近づいていく電車
街の雑踏
行き場のない魂
帰る場所のない身体
静かな室内