救済詩『無限にあるもの』by KAINEL

無限にあるもの

知っているはず
見ないことで
見えるものが
無数にあることを

気づいているはず
聞かないことで
聞こえるものが
無限にあることを

分かっているはず
言わないことで
伝わるものが
無量にあることを……

外側の僕が
真面目な顔をして
深刻そうに
そう話しかけてきた 

救済詩『春の朝』by KAINEL

春の朝

もっといろいろ
話したかったのに

あの人は
もういない

もっと一緒にいたかったのに
あの人は
そっと逝ってしまった

春の朝
僕の心に
穏やかな笑顔を残して

それ以外は
なにひとつ
残さないで

救済詩『快楽の園』by KAINEL

快楽の園

ネーデルラントの画家が描いた
不思議なおとぎ話の世界

そこでは
すべてが愛で
すべてが信仰で

青く晴れた空
穏やかで
柔らかな日差し

大地に広がる
生命の森
現れては消える
色とりどりの精霊たち

終わりのない物語
永遠の戯れと
無限の快楽と

寄り添うように
仲睦まじい
森と生きもの

その境界は曖昧で
樹木が鹿になったり
花が小鳥になったり
キノコが羊になったり

一角獣が空を駆けている
白く大きい背中には
生まれたばかりの妖精と野兎が
並んで座って

愛も祈りも
満たされた世界
そっと神が流した涙が
大地に溶けている

救済詩『ここでは』by KAINEL

ここでは

ここでは
喪失は
悲しみでなく

悩みは
苦しみでなく

死は
迷いでなく

朝が訪れる
夕暮れに似た色をして

川のほとり
絶え間ない
水の音

奥深い
なだらかな
山の影

遠くで
響く
鳥の声

救済詩『1秒』by KAINEL

1秒

1秒で
世界を奪えないなら
10秒でも
1分でも
1時間でも
1日でも
1か月でも
1年でも
10年かけても
世界を奪うことは
できないと

街の雑踏の中
顔のない誰かが
大声で叫んでいた