無限にあるもの
知っているはず
見ないことで
見えるものが
無数にあることを
気づいているはず
聞かないことで
聞こえるものが
無限にあることを
分かっているはず
言わないことで
伝わるものが
無量にあることを……
外側の僕が
真面目な顔をして
深刻そうに
そう話しかけてきた
無限にあるもの
知っているはず
見ないことで
見えるものが
無数にあることを
気づいているはず
聞かないことで
聞こえるものが
無限にあることを
分かっているはず
言わないことで
伝わるものが
無量にあることを……
外側の僕が
真面目な顔をして
深刻そうに
そう話しかけてきた
春の朝
もっといろいろ
話したかったのに
あの人は
もういない
もっと一緒にいたかったのに
あの人は
そっと逝ってしまった
春の朝
僕の心に
穏やかな笑顔を残して
それ以外は
なにひとつ
残さないで
快楽の園
ネーデルラントの画家が描いた
不思議なおとぎ話の世界
そこでは
すべてが愛で
すべてが信仰で
青く晴れた空
穏やかで
柔らかな日差し
大地に広がる
生命の森
現れては消える
色とりどりの精霊たち
終わりのない物語
永遠の戯れと
無限の快楽と
寄り添うように
仲睦まじい
森と生きもの
その境界は曖昧で
樹木が鹿になったり
花が小鳥になったり
キノコが羊になったり
一角獣が空を駆けている
白く大きい背中には
生まれたばかりの妖精と野兎が
並んで座って
愛も祈りも
満たされた世界
そっと神が流した涙が
大地に溶けている
ここでは
ここでは
喪失は
悲しみでなく
悩みは
苦しみでなく
死は
迷いでなく
朝が訪れる
夕暮れに似た色をして
川のほとり
絶え間ない
水の音
奥深い
なだらかな
山の影
遠くで
響く
鳥の声
1秒
1秒で
世界を奪えないなら
10秒でも
1分でも
1時間でも
1日でも
1か月でも
1年でも
10年かけても
世界を奪うことは
できないと
街の雑踏の中
顔のない誰かが
大声で叫んでいた